第78話

部屋のドアを開けて、玄関の床にケーキの箱とバッグを置き、いつものようにブーツを脱いで、いつものように照明を点ける。




真っ先に視界に飛び込むのは、誰もいない部屋の真ん中に鎮座する電気ストーブ。




逸る気持ちを抑えながら電気ストーブに歩み寄り、そのスイッチを入れると……。





『お帰り』





程なくして姿を現した彼は、待ちかねていたと言わんばかりに、私に微笑みかけてくれた。





「ただいま~。見て、見てっ、ケーキ、買って来ちゃった」





私はいそいそと玄関まで戻り、ケーキの箱を抱えて再び彼の前に躍り出た。





繁華街のウキウキモードの余韻を引きずっているのが、自分でも痛いぐらいだ。




そんな私のテンションの高さに呆れているのか、すっかり定位置となってしまったベッドの上に腰を下ろし、彼は苦笑している。




『大きい箱だね……。俺は、食べられないんだよ?わかってる?』





わかってる。





だけど……考えないようにしていた。





折角一緒にクリスマスを過ごすのに……1人分の小さなケーキなんて……寂しいもの。

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