第52話

本当に、何も分からないんだ。





そして。





分からないのは、私も………。





どうして彼が私の傍に、と思ったのか、やっぱり理由が見あたらない。




少なくとも、目の前の彼の姿を、私は知らないし。




こんな綺麗な男の人、どこかで会っていたら忘れられないと思うもの。




じゃあ、私の知らない誰かが、どうして、私の傍にと望んだのか……。




もしかしたら、彼は……




人違いをして、ここに現れてしまっている……?




だとしたら……。




たまたまこのストーブの所有者になっただけの私には、彼に優しく包まれる資格なんて本当はなくて……。





彼が現れるべき場所は……ここではなくて……。





その事に、今はまだ、彼自身が気づいていないだけで……。





いつかは、私の元を離れて……。







ああ……やめよう。





そんな事、今は考えたくない……。





暗く淀んだ気持ちをリセットするべく、私は、堅く瞼を閉じた。

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