第49話

しばらくの間、私は、日本の昔の怪談にありがちな女の幽霊のように、地味にすすり泣いていた。




それは、多分、時間にして数分程度の事。




その間ずっと、彼は、私を包み込み、黙って寄り添っていてくれた。




そして。




目の奥と頭が痛み、涙は枯れ果て、鼻が詰まってしまった今もまだ……。





私は、彼に背を向けたまま床にすわりこんでいる。





ほんのりと暖められている身体から、指先から、頬から……確かに感じる彼の気配。




彼が私を慰めようと意図しているかどうかは分からないままだけれど、私はそのぬくもりに癒され、慰められていた。




情けない自分に幻滅していて、自己嫌悪に陥っていたのは、誰の所為でもなく自分の所為なのに。




慰めて貰う理由なんて、何一つないって思うのに。




傍から見たら、鬱陶しい女以外のナニモノでもないって自覚しているのに。




今、こうして彼の癒しに甘えてしまう弱さを、どうすることも出来ない。




他人……というか、人ですらない存在に、ここまで依存するなんて……どうかしてるとしか思えないけど。




このぬくもり無しでは、きっと、カタルシスに浸るきっかけすら得られなかっただろう。

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