第46話

乱れた息を止めて立ち上がり、道路に投げ出してしまったバッグを拾い上げる。




お店を飛び出して。




住宅街を駆け抜けて。




工場の前を過ぎて。




通い慣れた道に出て。




走って、止まって、歩いて、また走って……




アパートの近くの路地までたどり着いたところで、コケて。




髪は乱れて、コートのベルトは解けて汚れて……多分、化粧なんかボロボロに崩れてて……。




なんて、情けなくて惨めな私。




見た目だけじゃない。




満更でもないんだろ、だなんて……言われて。




………情けないにも程がある。





………でも……。






『満更でもない』と……そう、取られるようなそぶりで接してしまっていたのは、私。




無理矢理八方美人で笑顔をふりまくのも仕事の一環だから、と思っていたけれど……。




会社には沢山の男の人達がいるんだもの、中には、あんな風に勘違いする人がいても不思議じゃないんだ。




その上、25歳で彼氏がいない事を、自分から「独り身は寂しいですよ~」なんて冗談混じりに卑下して見せたり……。




そういう私の態度が、景山さんにあんな思い込みをさせてしまったのかもしれない。




マスコット扱いは苦手とかいいながら……。




結果として、私は、男性社員に媚を売っていたも同然だった。




だから、これは……身から出た錆。






「ホント、最悪」




自嘲を込めて吐き出した声は、白い息となって夜の空に消えていった。

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