第44話

あり得ない。




冗談じゃない。




それは……あなたが……周囲にそう思わせるような事をしているからで………っ。



「俺、今すぐ離婚はできないけど……もしもその気なら……考えても……」



り……こん?



離婚~~?



な、何言っちゃってんの?



どうしちゃったの、この人っ!?




「うえっ、いえいえっ、それ、あり得ないですからっ!……その気とか、そういうの、全然……っ!」




卒倒寸前の意識を立て直し、私は思いっきり首を横に振った。



頭がクラクラするのは、もはや、酔いの所為だけなんかじゃない。




「不倫だからとか、そういうの気にする事無いぜ?………どうせ、アッチだって男作ってんだし」



私の精一杯の否定なんて気にも留めていないといわんばかりに、彼は、涼しい顔で髪をかき上げている。




艶めいた眼差しと微かに笑んだ口元。




その口元から紡がれた言葉は全て、戯言のようでしかないのに……。




笑い飛ばす事を許さない雰囲気が、その場に漂っていた。




……これはマズイ。




この場にこれ以上いたら、良く解らない理由をつけられて、景山さんの意のままに物事が運んでしまいそう。




逃げなきゃ。




「私、困りますっ!!」




私は、景山さんの手を力いっぱい振り払い、逃げるようにお店を飛び出していた。

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