第34話

事務所の外に出ると、空には沢山の星が瞬いていた。






外気に曝された頬が急速に冷やされ、あの電気ストーブの光のぬくもりが益々恋しくなってしまう。





今夜も、話ができるかな……。





また、あのぬくもりに包まれながら、彼の言葉に相槌をうって……。





ちょっぴり、私の愚痴なんかも聞いて貰っちゃったりして……。





そうだ、まだ名前が思い出せないようなら、ニックネームをつけてあげちゃおう。





なんか……ちょっと楽しいかも♪





子犬でも飼い始めた時のような、そんな浮き浮きそわそわとした気持ちを抱きながら正門脇の通用門へと向かう。




「ふふ~、どんな呼び名に……」




しようかな、と、続けようとして、私は思わず息を呑んだ。





何故なら、駐車場のトラックの影から突然、ダウンジャケットとジーンズ姿の男の子が現れたからだ。




「あっ、お、お疲れさまですっ」




彼は、寒さに震えているような声で、そう言うと、ジャケットのポケットに突っ込んでいた両手を出して私に会釈した。




外灯に照らされたその顔を見て、彼が管理課の稲川くんだという事にようやく気づいた。




ユニフォーム姿の彼は細くて軟弱な印象なのに、ダウンジャケットのようなモコモコした服を着ると、なんとなく体格がよく見えるから不思議だ。




でも、顔の表情は変わらず、おっとりとしていてちょっと気弱そう。




「お疲れさま……です。こんなトコで……どうしたの?」




私は嫌な予感に駆られながら、彼に問いかけた。





稲川くんは、よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりに、表情を更に緩める。





「良かった、やっぱりまだ帰ってなかったんですね。俺、安原さんの事、待ってたんです」





「やだ、こんな寒い中でっ……な、何でっ?」




「景山さんに言われて……安原さん、二次会に連れてこいって……」




稲川くんは、ほとほと困ったそぶりで、そう答えた。





その答えを聞いた瞬間、私は、身体の中の血が一気に滾ったような感覚に襲われた。

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