第31話

今は、工場全体の忘年会の真っ最中。





社員食堂で立食パーティ形式の大宴会が行われている。





宴会が始まって1時間ほどが経過し、フリーのカラオケタイムに入ったので、次の余興のビンゴゲームまでは司会の私も出番がない。





こういう時間を利用して、司会やアシスタント達はお酒を飲んだりお料理を食べたりするわけなんだけど……。





酔っぱらった人達で賑わう会場に身を投じるのがどうしても躊躇われて、食堂の厨房の隅に逃げ込み、チビチビと缶のウーロン茶を飲んでいたのだ。





大型業務用冷蔵庫の影で椅子に座り、昨日の出来事に思いを馳せていた私を、太田主任は気分が悪くなって休んでいるのだと思い込んだらしい。





でも、心配してくれている太田主任の方が、だいぶいい感じに酔っぱらっているみたい。





「ならいいんだけど。それより、景山(かげやま)くんがさ、安原さんを二次会に連れて行くって張り切ってたよ。……どうするの?」





そう言う太田主任の苦笑を見上げながら、私も思わず苦笑してしまう。




「……うはぁ……困ります~」





『景山くん』とは、管理課の景山さんの事。





その人は、太田主任の一年後輩で、社内の若い男の子達にとっては面倒見のいいアニキ分といった存在で。





仕事もできて、行動的で、頼れるタイプ……というのが、景山さんに関する一般的な評価。





でも、それは……お酒が入っていない時に限る。




彼こそが、酔うと決まって私にセクハラ紛いの言動をする、厄介な男の先輩なのだ。





お酒が入った彼は、一癖も二癖もあって。





普段から自信家で強引で俺様で、お酒が入るとそれに磨きが掛かる。




景山さんのそういうところもお酒の場が盛り上がって良い、という、同僚の声もあるけれど……。




私には、そうは思えない。




お酒の席では、決まって肩に手を回してくるし、『こいつは俺のモノ』宣言するし……。




独身で彼氏無しの私だから、からかうのに丁度良いと思っているのかも知れないけれど、冗談とはいえ愛人扱いはシャレにならない。

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