第29話

何故なら、息を止める反動で軽く吹き出した私の鼻息に、その光は形を歪めることはなかったから。





私は、頬を光に包まれたまま、恐る恐る呼吸を再開した。





「わ、私の?………な、なんで?」





『わからない………ただ、そう望んだから………』





光の物体は、躊躇うように言葉を紡ぐと、私に差しのべていた手を引き戻し、まるで実体のある人のようにすぐ脇のベッドの上に肘を突いて顔を逸らした。






『望んでいたから……だと思う』






今は遠くにある過去の記憶を確かめているかのような、そんな微かな呟き。





その光の物体に表情はないのに、何故か私には、彼が少し微笑んでいるように見えた。

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