第35話
――私の名前だ。
ぶわりと鳥肌が立つ。私が大賞なんだ、あのハルの作品を差し置いて、私が……。
「大賞は、メイサさんの小説――」
「ありえません!」
叫び声が司会の声を遮る。声の方を見れば、審査員席にいた神秘の星の審査員が立ち上がっていた。
「小説が、言葉が大賞!?そんなものは私たちへの冒涜ではありませんか!そんなこと許すわけがないでしょう!?」
審査員がそう叫ぶと、フードの下から巨大な狼がのそりと這い出してきた。それを見るとフェルカは、うわ、と声を漏らす。
「なにやってんだか、あれ制御できなくなってるね」
「制御?」
「うん。あれ、皆に見えてるよ」
当然コンテストどころの話ではなくなって会場は阿鼻叫喚。人々は逃げまどい、狼は逃げ遅れた人を襲い始める。思念体を操れる人は少ない。なすすべもなく思念体が砕けていく様を見ていることしかできない。
「――人間ってこういう、本の発表の時ってパーティとかするんだっけ?」
ふと、彼がそう呟いた。こんな大変な状況で何を、と、彼の方へ目をやった。隣の彼はというと目を爛々と輝かせて、大層きれいな顔に下手くそな笑顔を浮かべている。
「僕、結構本気で嬉しくてさぁ。強制的に皆に共有させていい?そしたらどうせアレも止まるし」
「……ハハ、やってみる?」
そんな絵空事を口にした。普段なら絶対に言わないそれも、これ以上ない高揚感の中じゃ誤差みたいなものだった。
きっと私も下手くそに口角を上げて笑っている。
そんな私に、彼はもっと挑戦的にニィッと口角を吊り上げた。
「あのね、実はやれるんだよ」
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