第25話

「ハルさーん、こんにちは」

「アンタ、委員長の……」


 アタシの元にソイツが来たのは、先行展示が終わってすぐの事だった。

 先行展示の評判が思っていたよりも良くて、この日はいつもより筆が乗っていた。その手を止めるデメリットよりも、その男の雰囲気に手を止めたのだ。


「ディレクター科2年のアルハって言うッス。ちょっとお時間いいッスか?」


 *


「さすがに言い過ぎ」

「なーに言ってんスか、これが現実ッスよ。ハル先輩だって分かってるでしょ」


 アルハから、委員長と転校生の話を聞いた。それも『最初』から。

 思念体がどうとか、神秘の星のきな臭い話とかを聞いて、少し前に見かけた小犬を思い出す。あれは多分委員長の思念体だったんだろう。


「『自分がやりたいことをやる』って言っておきながら、他の人が力を見せた途端『今更何しに来た』なんて言われちゃたまんねーッス。それに神秘の星の奴と組んでんスよ?」

「フェルカが思念体を使えば思った通りに塗り替えられる。都合のいいように」

「そんなズルさせるわけにいかねーッスよね。……つーことで、はいコレ」


 そう言って渡されたのは小さなカケラだった。ホログラムみたいに光を反射してキラキラと輝いている。が、そこら中にひびが入っていて、強い力が加わればすぐに割れてしまうだろう。


「なにこれ、何かのカケラ?」

「メイサ先輩の思念体のカケラッス」


 なんでもないことのように言われてギョッとする。カケラとはいえ、その人の意思に関与できるものなのだ。


「ダメ。やっていいことと悪いことがあるの分かんないの?」

「アイツらもできるじゃないッスか。先手を打っただけッスよ」


 返そうとした手をそのまま押し返される。『先手を打った』?そんな言い訳じゃどうにもできないくらいのものが、今アタシの手の中にあるのに。


「バカ真面目にバカ正直にやってた俺らが割り食うのはおかしいでしょ」


 今にも砕け散りそうな小さなカケラは、手の中で淡く輝いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る