第24話

家にも帰りたくなくて、いつもの教室へ向かう。誰もいないと思っていたそこには、見慣れた藍色の髪があった。


「あれ、メイサだ。どうしたの?」


 そんな風に優しく微笑まれて、心配されたら、耐えられない。


「もう、言葉なんていらないんだ、って言われたんです」

「……うん」


 勝手に口から言葉が漏れる。思ってもない言葉が、思わないようにしていた言葉が溢れて、制御できない。それだけは言っちゃダメだと分かっている、のに。目から零れ落ちる涙みたいにぽとりと落ちた。

 

「必要とされないなら、もう頑張る意味なくないですか」


 フェルカの顔を見れない。今までみたいに優しく笑っていてほしい、そうして何にもできない私を許してほしい。だってもう、苦しいくらい頑張ったから。


「いっそ普通の人みたいに恋、とか……」


 後半は言葉にできなかった。


「メイサがそうしたいならいいのかもね」

「……え」

「普通の恋人みたいに2人で出かけて、手でも繋いでさ。あぁキスとかしてみる?人間ってそういうの好きなんでしょう?」

「フェルカ、」


 まさかそんな返事が返ってくるとは思っていなくて、言葉に詰まる。でも、何かおかしい。まるで投げやりみたいな、少し冷たい声色。

 

「なんて、言うわけないでしょ」


 顔を上げる。私を見下ろすフェルカの目には失望が浮かんでいた。

 ――私、さっきまで、何を……?


「僕の見込み違いだったみたいだね」

「待って」

「今のメイサじゃ、僕には一緒にいる意味がないんだよ」

「ごめんなさい、お願いだから待って!」


 今更正気を取り戻して、必死にフェルカを引き留めようとする。それを意にも介さず彼は淡々と言葉を吐くだけだ。

 手を掴む。それも、すぐに外された、けど。


「バイバイ」


 こちらも見ずにそう言うと、彼は部屋を出た。


「フェルカ……」


 ひとりぼっちの図書準備室はひどく寒くて、独り体を抱きしめてうずくまっていた。

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