第20話
パソコンで文字を打ち込む。ここまで書けば、本の形にはできるだろう。集中していれば時間はあっという間で、空は夕焼けを過ぎて紫色になっていた。さっさと帰り支度を済ませて昇降口へ向かう。……2週間前も同じように帰路についていたのに、随分と状況が変わってしまった。
「あ、ごめん」
そんな考え事をしていたからか、曲がり角から飛び出してきた人を避けきれずにぶつかってしまった。
「すみません、私、も……」
「うげ、文芸委員長かよ」
ぶつかったのは絵画科の生徒、ハルだった。
彼女は絵の具を片付けている途中だったようで、腕には大量の絵の具チューブを抱えており、その制服には少し絵の具が飛んで色が残っていた。
まさしく絵画科らしい姿。――そんな姿、思念派が来る前は見たこともなかったのに。
「今更何しに来たんですか」
「……はぁ?……作品作ってんの。見たら分かるでしょ」
そう言って彼女は苛立たしげに溜息を吐いた。元々こうやって話すこともない程度のかかわりだ。これ以上話すこともない、と踵を返そうとしたところでハルが口を開いた。
「委員長も芸術コンテスト参加すんでしょ」
「委員長
「アタシも作品出すから」
耳を疑った。彼女が、授業も真面目に受けていなかった彼女が、コンテストに?……つくづく実感する。思念共有装置って本当に素晴らしい技術なんだ、と。
彼女でさえコンテストを目指し始めるんだから。
「せいぜい、足元掬われないようにしときなよ」
こちらを睨みつけながらそう言うハルの後ろに一瞬、思念体が見えた気がした。
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