第19話

中学一年生の1ヶ月なんてたかが知れてる。たいして代わり映えしない教室は、ザワザワと騒がしさが波よせている。いや、怖いくらい真っ黒に焼けてるやつもいるけどそういう話ではなくて。

 あの強烈で鮮明な日々は本当に存在したのかと少し不安になるくらいにはいつも通りだった。


 結局彼らは何だったんだろうか。ヒト、じゃなかったのかもしれないけど幽霊とも思えなかった。夏にできる陽炎そのものみたいにアイマイで、夢だったって言われたら納得してしまいそうだ。




「本当にありがとね、哀斗くん!」

「まぁ僕も暇だったんでいいですけど」

「しかし何だい!女の子と青春っぽいことしてたんだって!?いいねぇいいねぇ!」

「うるさいですよモコちゃん先生」

「…………あ、俺!?俺か!」



 つい、先生をあだ名で呼んでしまう。夏休みの間で耳が慣れてしまったせいだ。慌てて訂正しようと口を開くが森川先生_モコちゃん先生が嬉しそうな顔をしているのを見て、そのまま閉じた。



「ほら、日記。最後の週だけほぼ空欄だから心配だったんだよ」



 最後の1週間。誰もいない生物準備室は思い出すだけで苦しくなる。4週間で随分と変えられてしまったものだな、本当に。

 それを証明するものは無いっていうのに。



「疲れた顔してるよ、どうかしたの?」

「……夏休みの終わりくらいからずっと目が痛くて。目も日焼けするらしいんでそれかなって思って目薬だけしてるんです」

「あーダメだよ擦っちゃ。……そっか、目が、ねぇ」

「でももう治りそうなんで大丈夫ですよ」



 心配そうに僕を見ていたモコちゃん先生は、その言葉でパッと表情を明るくさせた。



「そっか!じゃあ日記の続きも書けそうだね!」



 え、と声が漏れる。正面の窓に反射して僕の背後に4人分の姿が見えた。



「いやーずっと無視されるから悲しかったなー。ちゃんとごはんくれたのは偉いけどさー」


「俺も花の成長を一緒に見守ってたのに、放置したって思われてたし?まぁ陽の光が届かないからあんまり見に行けないんだけどね」


「お、お久しぶりですぅ……。あのぉ、来年の花火大会もこれで行こうってまた主役を……!助けてぇ……!」


「知ってた?校舎裏の水道、移動されてサッカー部の部室の裏になったんだよ?もっと間近で見守れちゃうね」



 聞き慣れた声、見慣れた顔。呆然とする僕を見て、彼らは楽しそうに笑った。

 なんだ、まだ"いつも通り"なんかじゃないのかよ。




 答:探さなくても、平気な顔してそこにいる。

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アイマイの見つけ方 雨夏 @uka_amanatsu

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