第16話

クッキー、マフィン、フィナンシェ。難しいのだとマカロンも作った。1日1個か2個、順番に練習していけば酷かった彼女のお菓子もだんだんと食べられるものになっていった。



「いい感じじゃないですか?食べれるんで」

「うぅ、やっぱりその基準なんだね」

「大変!!」

「うるさ……」

「舞ちゃん?どうしたの?」



 舞さんもたいして湊さんと変わらなかったので材料の買い出しを頼んだりしていた。のだが、この日は血相を変えて僕たちのもとに飛び込んできた。



「遠征の日、1日遅くなるって……!!」




「じゃあ遠征の日はもう湊さんは引っ越してるってことですか」

「そうなるね」

「う~どうしよう……」



 僕は聞いていなかったが、どうも湊さんはちょうど遠征の日に引っ越す予定だったらしい。言う必要が無いと思って女子会で舞さんにだけ話したらしい。相変わらず肩身が狭い。



「ありがとね2人共。私は大丈夫だから」

「でも」

「本当は顔見て話したかったけど、仕方ないね」



 空気が重い。そりゃそうだ、だって慣れない料理を1週間も練習したっていうのに、こんな。暗くなる僕らの肩をポンと叩いたのは、一番つらいであろう湊さんだった。

 彼女は少し落ち込んだ雰囲気は残っていたが、その目はキラリと輝いていた。



「秘密兵器の出番?みたいな」



 湊さんは、いつも通りふてぶてしく笑って見せた。

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