第5話

「哀斗くん、雨だよ!」

「そうですね……。ずいぶん元気じゃないですか」

「雨、好きなんだ!哀斗くんも元気だね、主に頭が」

「くせ毛なんですよ」



 翌日はあいにくの雨。約束の時間に陽さんは現れなかった。



「仕方ない。外出てみましょうか」



 きゃっきゃと騒ぐ舞さんは今時珍しい雨ガッパで、雨の中を飛び出してクルクルとが楽しそうに回っている。

 昇降口前の雨でぬかるんだ地面には足跡1つ付いていない。裏の花壇に行くには絶対にここを通るはずだからまだ来ていないのかもしれない。履き損ねたクツを直しながらキョロキョロと周りを見回すも、案の定彼の姿は見えない。



「陽さん、まだ来てないんですかね」

「ねぇ!早く行くよ!」

「はいはい……」




「何でいるんですか」

「え、今日だったよね?」

「そうですけどそうじゃないです」



 陽さんはすでに裏の花壇に座って僕たちを待っていた。陽くんだー、と舞さんが近づいていく後を追いながら、つい胡乱な目で見てしまう。



「足跡も無くどっから来たんです。空でも飛べるんですか?」

「実はね!」

「え!すご~い!」

「……」



 嫌味を含んだとげとげしい言葉は華麗に流された。なんとなく年上の余裕を見せられたような気がして気に食わない。

 さすがに本当に空でも飛んできたと思っているわけでもないが、彼を見ていると少しできそうだと思ってしまうから不思議だ。



「ほんとはね、ほらそこ」



 彼が指さしたのは一番近くの窓。あれはたしか保健室の辺りだっただろうか。



「あそこの窓から来たんだ。雨で濡れるのあんまり好きじゃなくてさ」

「意外と行儀悪いんですね」

「だから秘密だよ?」



 返事をせずに花壇へ近づくとクスクスと笑われた。クソ、あとで言いつけてやろうか。

 花壇は先に舞さんが見ていて、その横から顔を覗かせる。丁寧に手入れされた様子はあるがやっぱり日当たりがな。と悩んでいると2人は端にある枯れかけた花を見て話し始めた。



「この枯れかけてるのは?」

「ちょっと前に誰かが試してみたみたいだね。でもやっぱり難しいみたいだ」

「……ど~しよ?」

「その相談をしに来たんだよ?」

「あの、ちょっといいですか」



 2人の会話に割り込む。この相談が来てからずっと考えていたが全く解決策が思いつかなかった。だって、僕らには植物の知識なんてろくにないから。

 知識が無くて対処がわからないなら、プロの力を使わせてもらうべきだろう。



「……秘策があります」



 彼らの好奇心たっぷりの視線が僕に突き刺さった。

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