第4話

とても素敵なチラシを見て来たのは男子生徒だった。ふわふわとした髪に女性的な温和な顔つき、女の子10人がいたら全員が恋に落ちそうな少年。見た目でいえば僕より先輩っぽく見える。



「よかった。ちょうど困ったことがあってさ」

「ナイスタイミングだよ~!ちょうど今日から活動開始だったから!」

「ほんと?やった」



 口元をゆるりと緩めて笑う姿は少しだけ幼さが見える。視界の端にチラチラ映る舞さんのドヤ顔は無視しよう。



「俺はよう。一応、君らの先輩になるかな」

「舞だよ。お悩み解決屋さんにようこそ!」

「……哀斗です」

「で、で、お悩みは何ですか!」



 フンフンと鼻息荒く意気込む彼女を適当な棚から出して入れた紅茶で落ち着かせる。裏のカゴにあった高そうなお菓子も食べてやろうかと思ったが、先に陽さんの話を聞くことにしよう。

 彼の前にも紅茶を置くと綺麗な動作で口をつけた。なぜか6つほどある椅子を引っ張ってくると彼は話し始めた。



「校舎裏の花壇、知ってる?」

「あぁ、緑化委員も手を付けてないって聞いたことあります」

「なんで?」

「校舎で陰になって育ちにくいんだよ。育てられたとしてもお世話がちょっと大変だからね。そこの花壇を花でいっぱいにしたい」



 なるほど、僕が緑化委員なら絶対に世話したくない。恐らく先人たちも同じ考えで手を出さなかったんだろう。



「とりあえず、さ。ちょっと見てくれる?そこの廊下から見えると思うから」



 彼の言葉で3人で廊下の窓を覗くと、なるほど確かに奥の方の日陰に花壇が見える。形としては中庭のような場所だが、ちょうど日の当たるべき場所に校舎が建っているせいで全く光が入ってこない。



「どうしてあそこを?」

「とある子が、この花壇は太陽の光が当たらなくて花が咲けないから寂しい、って言っててつい」

「それ、陽さんがやる必要あるんですか?」

「ないよ」



 即答だった。意外な返答に驚いて、チラリと陽さんの表情を盗み見ると視線に気づいたのか彼もこちらを見る。



「でも、俺も見てて寂しかったからさ」



 その目はあたたかさに溢れていた。



「といっても、水道も近くにないんじゃ誰もお世話してくれないんだけどね」

「そこに水道あるじゃないですか」

「あぁそこ、夏休み中に撤去されるんだって。使う人がほとんどいないし運動場の近くに新しいのがあるからいいだろうって感じみたい」



 花壇用にしかならないであろう水道も、その花壇が使われていないなら撤去という形になる、か。当然と言えば当然だが、僕たちがやろうとしていることにはマイナスの効果しかない。



「問題は山積みってことですか。どうします、舞さん」

「んぇ!?……先は長いね~」

「ちゃんと話聞いてました?」



 問題は花壇だけではないみたいだ。オイ、目をそらすな。

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