第14話
だというのに、なんでオマエがそんな傷ついたような顔をするんだ。
いたたまれない沈黙が俺らを包んでようやく、やってしまったと思った。もう帰ろう、と言おうとしてそれを阻んだのは彼女だった。
「翔太くんは、ラムネになんでビー玉が入ってるか知ってますか」
「……は?」
「知ってますか?」
真面目な顔をして急にそんなことを聞いてくるから、すっかり毒気を抜かれた俺は間の抜けた顔をしたまま会話をしてしまった。
「いや知らねぇけど」
「なぁんだ、知らないんですね」
「……あ?」
「ラムネにビー玉が入ってるのは炭酸を密閉するためなんですよ」
なんだって急に雑学を披露されなきゃいけないんだ。俺たちはそんな話をしてたんじゃないだろ。
「だからなんだよ。自慢か?」
「ビー玉の私でも知ってることを翔太くんは知らないじゃないですか」
「……だからなんだって言ってんだろ!」
バッと顔をあげた彼女の瞳と目が合う。俺の嫌いな、秋の黄昏の色をした瞳が、俺を睨んで。
「――どうせなんて言って、翔太くんの未来を諦めないでくださいよ!」
キィンと、耳鳴りがした。
周りの音はどこかに行ってしまって、不安なほどの静寂をつんざく耳鳴りに不覚にも縋ってしまいそうになる。いや、そんなのはどうでもよくて。よくなんかないけど、でも。
あぁ、思考がまとまらない。じわりと景色が滲んで見えるのも、全部このビー玉のせいだ。
「翔太くんがいなきゃなにもできない私よりも知らないことだってあるのに!奇跡なんて、夢物語だなんてそんな言葉で逃げないで……!」
全部飲み込んで消えてしまうくせに、どうしてこうも何かを残そうとする?
それがどれだけ酷いことか、わかっていないんだろうか。
そうじゃないことを俺は知ってる。未来が確実じゃないってことをコイツが知っているのを、わかっている。
「貴方自身が諦めるなんて、さみしすぎますよぉ……」
そう言って彼女がポタポタと涙を流すから、俺まで溢れてきてしまうのだ。
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