第9話

「あ、アレ何ですか?」

「どれ……、あーカカシな……」

「隣の大きい建物は?」

「……アレはリサイクルセンター」



 ビー玉を掲げながら話すのってだいぶヤバい絵面なんじゃないだろうか。土曜日昼過ぎの河川敷、人通りが少ないのが唯一の救いだ。


 一番日差しの強くなる時間に外に追い出すって、あの人ホント無情……。

 俺が熱にやられているというのに、ビー玉は平気そうにキョロキョロと辺りを見回している。良い御身分だな。


 何でもない風景に興奮しているのを見ると本当に何も知らないんだなと思う。



「あっちのはわかりますよぉ、バス停ですね!」



 ……かと思えばこうだ。聞けば前の人に教えてもらったのだとか。



「じゃあ前回の人のとこ行きゃよかったんじゃねぇの?」

「できなくはないですけど……。せっかくならいろいろな人に出会いたいんですよ」

「そんなもん?」

「そんなもんですよ」



 ドヤ顔をするな、という思いを込めてビー玉をつまむ力を強くしても彼女に届く前にガラスの感触が立ちはだかる。最近こんな理不尽ばっかだ。

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