第5話
「起こしてくださりありがとうございます!……まさか九月まで寝てるとは思いませんでした」
「……オマエ、何なの?」
「でも買ってもらえた日に起きられたのは幸いでした!」
「話聞く気ねぇだろ」
「いや、しかし……貴方もしかして……」
聞けよ、話を。
不躾に俺を上から下へジロジロと見たそいつは、目をキラキラと輝かせながら口元に手を当てて声を漏らした。
「不良……!」
「違う。進学校でもねぇから校則緩いんだよ」
「なーんだ。ちょっと憧れだったんですけどねぇ、校舎の窓ガラスを全部割るんでしょ?」
どこの漫画だソレ。今時そんな不良いんのか?
耳にいくつも穴を開けたうえ髪も明るい色に染めてるからそういう目で見られるのは慣れてるが、こうも真っ向から言われると少し気まずい。というのに、ビー玉の中で居心地のいい場所を探していたらしい彼女は、クルクルと回っていた体をようやく止めた程度だった。
俺が見つけて起こしてやったはずなのにこうも図々しいとどうにも苛立たしくなって、指先でつまんだビー玉を振り上げると慌てた声が耳をつんざいた。
「わーーっ!なにやってんですか!!」
「ンだよ……うるせぇな」
「な、何考えてるんですか!?人の心が無い!?」
「俺はラムネを買っただけでオマエを起こしてやるつもりなんかじゃなかった。オマエみてぇな変な存在知らねぇ。……つーかマジで何だよこれ、夢?」
「よくぞ聞いてくれました!」
「あ、やっぱいいわ」
「聞いてくださいよ!」
ギャアギャアと騒ぐ声が人のいない公園に響く。今更だがこの声ほかの人にも聞こえてんのか……?俺だけが近所迷惑で怒られるのは嫌だぞ。
「私たちビー玉の妖精みたいなものなんですが、買ってもらってから三日間だけこの世界で過ごせるんです。三日経つとまた来年!って感じで……うぅんなんて言ったらいいんですかねぇ」
「説明下手か?」
「雰囲気でわかってくださいよぉ、買ってくれた人にしか私は見えないんですって!」
「……要は三日耐えればいいんだろ、俺が」
「仲良くするっていう選択肢はないんですか?」
大変不服です!というように少女がぷくりと頬を膨らませる。仲良くなんてする意味がわからない。
どうせ、三日じゃ何もできないだろうに。まっすぐな瞳に気圧されて、黙って制服のポケットにねじ込んだ。
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