第6話「魔法界」
そして走り続けていたらいつの間にか街を眺めることができるであろう高台まで来ていた。ここには人がいないし、人通りも少ない。私は街を眺めた。おもちゃ屋だろうか、そこのショーケースの中を眺めている小さな男の子が目に入った。ショーケースの中には汽車のおもちゃとうさぎとくまのぬいぐるみが入っていた。棒を持った店主が店から出て、ショーケースに向かって棒を振った。すると動かなかった汽車のおもちゃが動き、ぬいぐるみは踊り出したのだった。
「!あれって…!」
私は目を見張った。現実ではあり得ないことがあそこで起こったのだ。
「嘘でしょ…そんなことありえる⁈」
おもちゃ屋の店主が持っていたのは、棒ではなく魔法の杖だったのだ。私は街で感じた違和感の正体を知った。魔法だったのだ。夢のようで現実。私が小さい頃、夢までに見た『魔法』があそこでは使われていたのだった。それに気づいた瞬間、この世界の魔法で行われていることが目についてきた。
すぐ下に見える住宅街では、積み重なった本を浮かしている。その少し離れたところでも、杖を使って水を操り、花に水やりをしている。さも当たり前のように魔法を使っている住民の姿を見てすごく現実味が湧かない。
それもそうだ、だって私はこの世界の人間ではないから。
でも、夢にまでに見た魔法の使える世界だ。自然と気分が上がる。
「萌夏がここにいたら絶対大騒ぎしてるなぁ(笑)…そうだ、そうだった、萌夏の部活が終わるのを待ってたんだ。」
自分が魔法界に来てウキウキしているが、萌夏が待っているから帰らなくちゃいけない。
さて、どうやって元の世界に帰ろうか。私はここに来るまでに起こったことを思い返す。まずどうやってこの世界に来てしまったのか。
おそらく白い大きなドアを開けて入った瞬間がトリップしてしまった原因だろう。じゃあ、そのドアを見つければいい。そう考えた由良はドアを探すことにした。
「今は14時。遅くても18時には見つけて帰りたいなぁ」
由良は自分の存在を明かさないことを誓い、気を引き締めて街へ戻った。
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