③
中傷や嫌がらせのレベルは、仕かけてくる人間によって大きな差があった。
小さければ、ただひそひそ何かしら言われる程度。中くらいだと面と向かって聞くに堪えない悪口を言われたり、突き飛ばされたり。ひどいものになってくると、サッカーボールをわざと蹴りつけられ、顔面にぶつけられて大量の鼻血を出すほどの怪我を負わせられる事すらあった。
奴らは、一度だって謝ってきた事はなかった。むしろ「ざまあみろ」と言わんばかりの下卑た笑みを浮かべ、こちらが何かしらの反応を見せれば、さらにおもしろがって次の手を打ってくる。私は耐えた。ひたすらに耐えた。いつかは必ず終わる、そう信じて耐え続けた。
最初にそんな我慢にヒビが入ったのは、妹が泣かされて帰ってきた時だ。妹は体が弱かったから、私より抵抗する事など到底できるはずもなく、どんなに悔しいと思っても泣く事しかできなかった。
妹に向けられる悪意を何とか私一人に収められないだろうか。そんな事を考え始めた小学四年生のある日の事だった。
その日の放課後、私は一人で帰路に着いていた。午前中に降っていた雨がぴたりとやんで、この日はもうお役御免になっていた傘を持て余し気味に軽く振りながら校門に向かっていた時だ。ふいに突然、後ろから突き飛ばされ、四つん這いの状態にさせられた。
「お~い、○○がいるぞ!」
「皆でやっちまおうぜ!」
顔を伏せていたから、何年生の誰なのか全く分からない。でもたぶん、二、三人だったと思う。そんな事をおもしろそうに言いながら、四つん這いになってしまっている私のランドセルや足を持っていた傘で殴り付けてきた。
とっさに頭を抱え、「やめて、やめて」と繰り返す。でも奴らは私の声を全く聞き入れず、さらにおもしろがって傘を振り下ろしてくる。バシン、バシンと鈍い痛みと衝撃が両足とランドセルに迸り、やがてそれらは頭を守っていた私の両腕にまで至った。
何で? どうして? 何でこいつらは、私と妹にこんな真似をするの? 私達は、何にもやっていないのに。
そんな事ばかりが、私の頭の中をぐるぐる回り始めた。
奴らの傘を振り下ろす力が、徐々に強くなっていく。やめて、本当にやめて。痛い、痛いよ。
このまま叩かれ続けて、もし頭にでも当たったら死んじゃう。私、こいつらに……。
コ ロ サ レ テ シ マ ウ
そう思った瞬間、私の頭の中で何かがキレた。
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