第157話
「どうしちゃったのよいったい……」
ロジェが立ち去ってあと、プレヌはベッドから腰を上げ立ちすくんだ。
傍らには数口かじられただけの三日月型のパンと手つかずの朝食がある。
ただ、彼にも食べてほしかった。
疲れているのなら、一息ついてほしいと思った。
それだけなのに。
視界にふと、わずかに開けられている文机の隣の棚が目に入る。
そこから覗く、深い赤色のなにかが、妙に気になった。
小瓶のようだ。――もしかして薬?
はっと息を呑む。
彼は体調が悪いのを隠している?
もしかして病気?
「……」
わずかに開いた戸棚に睨むように目をこらす。
人の部屋のものを勝手に見るのは気がひけるが。
そう思い立つとどうにもいられなくなった。
小走りで駆け寄り、その戸を開け放つ。
「――これは……」
棚から取り出した大量のそれをまじまじと見つめ、プレヌは座り込んだまま静止した。
胸の奥が、物理的に痛い。
膝ががくがくと震えはじめる。
しばらくその場から動かなかった。
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