第15話 三十分作戦
「バンダイが、オリジナルの新しいロボットプラモのシリーズを展開」
2019年春、その情報は模型界隈を駆け巡った。
曰く、テーマは量産機、低価格、全メカ共通ジョイントで組み替えが用意、豊富なオプションパーツを並行発売……。
アニメを冠しない模型だけのキャラクターロボットプラモデルシリーズ、「30ミニッツミッションズ」だ。
実は、似たような模型シリーズはこれが初出ではない。
模型メーカーの
コトブキヤは、バンダイと違いどちらかというと高年齢層向けのキット・フィギュアメーカーで、それ故に例えばゾイドのキットでもオリジナルより
値段は相応に高級だが間違いのない品質とオンリーワンなデザイン・アレンジの立体物を次々と生み出す業界のトップランナーの一翼である。
2009年から始まった「フレームアームズ」、それと共通規格で展開された武装美少女キットシリーズ「フレームアームズ・ガール」、2017年販売開始の1/24スケールのパワードスーツとその装備のシリーズ「ヘキサギア」。模型屋が立体物自体をコンテンツとして世に出す──このジャンルにおいてはコトブキヤは押しも押されもせぬ偉大なる先駆者だった。
バンダイがそこにどう勝負を仕掛けるのか。30MMの
「価格」だ。
最初期の機体価格を比べてみよう。
フレームアームズ SA-16d クファンジャル
3,960円(税込)
30MM 1/144 eEXM-17 アルト[ホワイト]
1,408円(税込)
キット自体のスケールを抑え、アニメを抱えないことで版権費を抑え、「量産機」を
でも、気軽に買える、という意味では、30MMに大きく軍配が上がるのは疑いない事実だ。
食玩1個が700円、一番くじが800円、1000円を超えるガチャガチャがザラにある時代。
1400円なら下手すればガチャガチャ1回より安い。
それで最新のSF戦闘ロボが組めるなら、
塗料3色買い足して、オプションパーツセットを1パック一緒に買ったとしても、FA1個よりまだ安い。
30MMは無課金の自キャラ……素体であり、無限の可能性のスタートラインなのだ。
アニメの縛りから解き放たれたバンダイのロボットプラモはまた独自の面白い展開を見せた。複数人のデザイナーがその得意なラインで腕を振るい、次々と個性的なメカやオプションが生み出され市場を賑わし、2024年現在、今や日本を代表する模型レーベルの一つにまで成長した。
低価格を言い訳にしないクオリティ、30分で組み立てられるようにをコンセプトにした説明書とランナー・パーツ配置の工夫、何より国内工場生産の精密なパーツ同士がパチリと
作って良し、塗って良し、改造して良し。
ガンプラの品薄に引きずられるように30MMも一時期は入手困難にはなったが、それでもガンプラよりはその入手難易度は低かった。同社製品だけあって、ガンプラの余り武装やジャンクパーツがそのまま流用できることも多く、元々ガンプラユーザーだったオレにとっては遊ぶに当たって経済的でもあった。
可処分お小遣いは本当に限られているから、出るもの全てを順番に……とは行かないが、これはと思うキットは手に入れ、そのコストパフォーマンスの良さを存分に堪能して来た。
だが、そんな30MMにも、オレは最近複雑な思いを抱くようになっていた。
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