第26話

それを目にしただけで、沸々と込み上げるのは、すっかりいつかの誰かの所為で身についてしまった創作癖。


嫌になる。

けど、それを辞めないのは他の誰でもない自分の為だった。



ふと立ち止まった信号待ちの間、スマホを取り出しメールの送り主を指先で。






『紡葵(ツムギ)』








多分利用したことのない件名をとばしたそこに。








『桜の花びらが舞って、萎びたスーツを身に纏った中年のサラリーマンの背に落ちた。





綺麗だった。』









と。


何の、他愛もない言葉を。






…綺麗そうだとわらう彼女を思い浮かべて。

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