第25話

「――…以前御社には酷な言い分で仕事をドタキャンされた過去があるので仕事の話は無かったことに」




・・・




ぐだぐだダラダラと言い訳がましい同じことを繰り返す電話の向こうに一方的に言葉を並べ、電話を切る。



下らないやり取りに、吐き出した溜め息にさえ苛つく。




『立花さん』



取引めいて繕われた声も。




『環』



馴れ馴れしく昔の話を持ち出す諄い大人にも。



飽きた。




自分が手にした筆で書いた文字が一冊になったものが店頭に置かれ、表紙には"その"名前が仰々しく書かれていた。PCで書かれたものも、含め。




それを目に触れさせず通りすぎ、一店の宝石店をも過ぎる。


ショーウインドーにはどこかのモデルが身に着けてカメラを向けられていた物が目立つよう置いてあった。

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