第13話 工作作戦開始
東野幸二は黒装束で身を固め、懐にはペレッタM92、肩にはライフルFNSCARを持って進入、いずれも自衛隊から支給されたものだ。更に特殊隊員はプラスチック爆弾や破壊工作に必要な武器を装備携帯している。
「こちらT予定の位置に付いた、この先に鉄の扉がある。かなり古いようだが出来るだけ音を出さず壊せるか」
Tとは東野幸二のコードネームだ。Sは真田二等陸尉である。
「こちらS了解、破壊工作員五名を送ります。その扉は八十数年前、旧日本軍が作った地下作戦室です。これは未だ存在しない事になっています。拠って彼らも知らない筈です。その扉を奥へ進むとクーデターを企て幹部の作戦室の横に出ます」
五分ほどすると五名の工作員がやってきた幸二は無言でその扉を指差す。工作員も無言のままハンドシグナルで応えた。彼らの一人が容器を取り出した。カルボラン酸という濃縮塩酸の百万倍もあるもので鉄を溶かす液体である。全員が防護マスクしてそのカルボラン酸をかけた。白い煙とともに、鉄が溶けて行く、やがて錆びた錠が解けて落ちた。これで音もなく開けることが出来た。
「処でこの旧陸軍が使っていた作戦室は敵に知られて居ないんだな。それにしても良く陥没しないで残っていたものだ」
「我々も知りませんでした。政府でも極秘の洞窟らしいです」
流石の幸二も溜め息をつき、ゴーサインを出した。幸二が作業完了とSへ報告した。
「了解、我々もそちらに向います。Tはそのまま進んで下さい。次のコールがあったら我々も援護に向かいます」
幸二達六人は作戦室から更に下に続く通路を警戒しながら進んだ。暫く進むと一人の隊員が手で合図し指を上に向けた。つまりこの横が敵の地下指令室だとシグナルを送る。しかし上から攻撃するのは得策でない。いくら特殊部隊の精鋭と言っても真正面から交戦したくない。一番良い方法は奴等の作戦室を爆破させる手がある。勿論爆発する前に退避しなくてはならない。
「奴等の作戦室の広さはどのくらいかな。そこから続く通路も知りたい」
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