第5話

そんな干物女の私が、どうしてここまであの外科医を前に動揺してしまうのか?



それは、彼が私が今まで出会った人間の中で、最低最悪の部類に分類される男だからだ。



日向 和(ひゅうが やまと)。



私より4つ年上の29歳。



私が知ってる彼は、バイトをいくつも掛け持ちしている大学生だった。



穏やかな笑顔が印象的な、爽やか系イケメン。



頭も良くて、優しくて、だけど初心(ウブ)な女子高生をなんの罪悪感も持たずに騙して傷つけることは平気でできちゃう鬼畜な顔を持っている最低最悪な男。



そんな男と再会してしまったら、動揺しても仕方ないと思う。



幸いなのは、向こうが私の存在に気づいていないことだ。



100人からいるスタッフの中に混ざる、過去に傷つけ弄んだ女の一人がいても、あの人が気付くはずない。



すでに記憶からなくなってるかもしれない。



それはそれで悔しい気もするけど、私だって忘れてしまいたい相手だ。



関わりを持たずにいられるならその方がいい。

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