180度

第16話

部活を引退してから暇を持て余す時、小説を読むのが気楽な時間の潰し方になった。


人と話すのが嫌なわけじゃない。


話しかけられればそれに答えるし、仲の良い友人との趣味の話はしていて楽しいと想う。


だけど元来話し下手で、話題もさほど多くない俺は、人から話しかけられることも少なかった。


自分から誘うのは苦手で、自然と待つことが増えた。


待っているだけでは繋がりは保てないと気付いた時には、もう自分の性格を変えることは難しかった。


壁を作っているのは自分なのに、壁を作らせる相手を責めていた気がする。


なんてヘタレな自分。


情けない。


情けないことは、嫌という程分かっていた。


それなのに、あいつ、春山 ひらりは、そんな俺に何度も「好きだ」と告げてくれる。


もう何度も、何年も。


入学当時から部活一辺倒の俺は、恋とかそういうのに興味がなかった。


人よりも疎かった。


好きだと言われても、どこかでその気持ちを疑っていた。


そしてその思いは、時が経つにつれて強くなった。


友人の一人である北条 篤。


ヤツとは小学校の頃からの付き合いで、数少ない俺の親しい友人だった。


社交的なヤツは、友人が多く、男女問わず仲が良くて、話題も豊富でそばにいて楽しい奴だった。


それは、俺が独り占めできるものでなくて、俺との時間より他の色んな人間と過ごすことを北条も好んだ。


つまらない俺と過ごすより楽しい方を選ぶ。当然のことだ。


ほんの少しの卑屈さは、やがて大きく育っていく。


たまに気を使って話しかけてくる女子にも邪険に返してしまう。


逃げた方が楽だった。


北条のような立ち回れないならいっそ一人でいた方が楽だった。

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