第11話

待って。


待ってよ!もう少し一緒にいたい。


もうすぐ卒業だし、進路違うし、会いたくても会えなくなるんだよ。


卒業までの貴重な時間なんだよ。


もう少し……。


何度も逃げられてる。


追っても追っても追いつかない。


そんなの嫌だよ。


いつもなら諦めてテニス部をもう少し見ていくところだけど、卒業が近くなってきて私も焦ってたんだと思う。


金網の向こうに消えていく彼を追いかけた。



「矢崎くん!」



「……」



足を止めて振り向いた彼は少し驚いて、でもそのあとすぐに面倒臭さそうに視線を逸らした。



「矢崎くん、喉乾いてない?自販機で何か奢るよ」



「は?別にあんたに奢ってもらわなくてもいいし……」



分かってた。そう返されることも。


でも、今日は諦めたくない。



「いいの!奢りたいの。ホラ、どれ?選んで」



矢崎くんの肘を掴んで自販機の近くに行って、小銭を入れる。


半ば脅すみたいに彼を急かすと渋々ながら、彼は、◯ろはすを選んだ。

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