第26話 友は類を呼ぶ。態度や口調は全くのミユキ。いえいえ。ココに現れますは、新たな職安の転職の女神。『トミコ』

「はああい、じゃ次の『意識』の方。どうぞお」

『あ、っはっ、初めまして..。私、宇宙店主と申しますが..』

「ハアイ、えっとお、宇宙店主さんね?チョットだけ待ってて下さいねえ、貴方のこれまでの『意識』。その履歴が記録されたA4サイズのバインダーを探して来ますので」

『っは、..ハイ。お手数お掛けします..』




 ワタシ?

 ああワタシね。

 残念!

 ミユキじゃござんせえーん!

 若し、ミユキファンの地球人達が今コレ見てたら飛ばして。イイよ、良いから。もうガンガン飛ばして次に行って、地球時間の無駄だから。アナタ達、直ぐに死ぬジャン?知ってんの私。


「トミコ。トミコって云うの。ミユキの同僚でねえ、尚且つ、超仲良いの。ウチら。ミユキは今宇宙日ね、帰った。ナンカ帰りたいからって。ワタシが彼女の代わりに、彼女の担当予定だった『意識』を今見てんの」



 いずれミユキが、アナタ達にココの仕事風景の詳しい概要を創造すると思うから、今は簡単にね。


 むさ苦しい宇宙世界の各惑星や、星から飛ばされて来た『意識』達共。

 この職安星で来世の宇宙人人生を私達、各職員で割り振るの。

 地球人が好きな賄賂とか、宇宙社会的地位を餌に、来世をオイシイ宇宙人人生にしようと企むヤツラ。

 全て抹殺。

 マジよ。

 このデカイ宇宙世界に、そんなカスみたいな自尊心は持って来ないでね。

 ミドリ色の血イ、見んよ。

 ほんと、マジで。



 今ワタシはねえ、書庫の世界を浮遊中。飛んでんの。この書庫と呼ばれる世界にはねえ、全宇宙人のコレまでの履歴が記録された白いA4サイズのバインダーが、三六〇度で展開されて並べられてんの。

 因みに此れら白いバインダーの製造元は『マルマン』。

 ここさぁ、良い仕事してんのよ。全ての商品が純地球製。第三地球世界で安く作らせて良い値段で売る、みたいなコスイ事は全くしてない超硬派の強面。それでいて小売価格も、他の競合会社と同等に近い価格帯。

 この宇宙世界でもメイドイン地球、大人気です。


 御免なさい、脱線しちゃった。

 皆んな大丈夫?

 この『急行トミコ号』に轢かれて死んでない?


 でさ、この書庫の世界は、その白いA4サイズのバインダーの色のお陰で真っ白な世界なの。上下右左、縦横斜め上斜め下。

 その白い世界から、毎回自分が担当をする『意識』の歴史が詰まったバインダーを根気よく探すのよ。

「うん、超大変だし、疲れる」

 気分がダレタ時は其の儘お家に帰るよ。だってシンドイんだもん。


 良いのイイノ。

 どうせ『意識』だって、ただ待ってる事位しかヤル事無いし。コッチの世界は地球と比べて、『時間』って云う単位が無いのよ。だから、もし『意識』が、

「オイ!ネーちゃん。オイラ、もう三地球時間も待ってんぞ!」

 ってワタシに凄んだところで、ワタシがその発言に意を唱えたら、もう三地球時間は不成立。ハイ残念でしたあ。

 そしてソノ口の利き方。

「ワタシは神様よ、転職の。それを知ってて言ってんの?アンタみたいなカスの『意識』、ワタシ次第で如何にでもナンのよ」


 で今はねえ、ワタシはちゃんと真面目に、『宇宙店主』の白いA4サイズのバインダーを探している最中でえす!

「アッ!あったあった!ナニこのバインダー?超薄っすいんですけど?」


 この白いバインダーの面白い特徴としてはねえ、そのバインダーの太さ、重さがそのまま、その持ち主の『意識』の歴史になるの。この宇宙店主って云う宇宙人のバインダーね、今まで見た事が無い位にペラッペラッ。


 普通はこのまま、その『意識』が待ってるブースのカウンターに持ってって、サア面談開始!って云う寸法なんだけど。

 チョットワタシ、この宇宙店主って云う宇宙人に興味が湧いちゃった。

 (覗いちゃえ!)


「アッ!」

「えっ!このオッサン、ミユキと緑色血縁関係ジャン!」


 アナタ達、御免。ちょっとだけ中断。

 ミユキに電話するから。




「アッ、ミユキい!ウン、ワタシワタシ、トミコお。


 うんうん、元気い。

 って言うかさ、今さ、ここに誰が来てんと思う?


 ウウン。

 う、ウウン。

 違う違う!もう全っ然大外れえ!


 宇宙店主。


 宇宙店主のオッサンが今居るよ。

 ココに」



 トミコ

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「ミユキ、職安で働いています。」 宇宙書店 @uchu_tenshu

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