第4話
黙り込んだ私を都ちゃんが心配そうに覗き込む。
「蘭ちゃん、大丈夫?」
私はこくんと頷いたものの衝撃を受けていた。
「……これが原因だな」
スパゲティーを食べ終えた美奈ちゃんが私にため息をつき、言う。
「これが原因って……?」
私が聞き返すと眞冬ちゃんが無言であの暗い写真を出す。
美奈ちゃんがそれを受け取り私に諭すように言う。
「フクがしたいのはこーゆーキスなの。
でも、蘭が何も知らないから遠慮しちゃうわけ」
眞冬ちゃんと都ちゃんは何も話さずに私を見つめる。
「チューなんてしたら理性が壊れて襲っちゃうから何もしてこないの」
「理性がこわれる……?」
なんか前に晴海もそんなことを言ってたような……。
眞冬ちゃんが食べ終えて雑誌を丁寧に鞄にしまった。
「福本先輩は偉いと思うよ」
眞冬ちゃんが静かに言う。
「普通だったら蘭みたいな無防備な子、とっくに襲われてるもん」
美奈ちゃんも頷く。都ちゃんまで頷く。
「っつーか。フク、かわいそうだなー」
美奈ちゃんに言われて私は最後に残しておいたトマトを食べた。
「じゃあ、どうすれば良いの……?」
美奈ちゃんがうーんと悩み私をみる。
「フクとキスする勇気、ある?」
私は無言で頷いた。それはある。
ってゆーか、ゆきくんがしたいと思ってるならしてあげなくちゃいけない、とも思う。
「じゃあ、自分から行くしかないでしょ。
だってフクは蘭が何も知らないと思ってんだから」
「どうやってやるの?」
「蘭は普通にチューすりゃ良いの。
そんであとはもうフクに身を委ねなさい」
緊張するな、と思って下を見たら。
「大丈夫、蘭ちゃん」
都ちゃんが笑って言った。
「福本先輩は優しいから。
蘭ちゃんに酷いことは絶対にしないよ」
あぁ、ゆきくん。
私は少しだけ大人の階段を昇った気分です……。
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