第3話

首を傾げる私にさっきまで読んでた雑誌を広げて見せてきた。



そこには外国の女の人と少し暗いベッドの上で唇を食べるようにキスする人気俳優の写真が。



「なんだこれ……?!」



私は思わず目を見開く。



「はっ?!あんたが言ってんのはこういうキスの話じゃないの?!」


美奈ちゃんは雑誌を横から見ながら私に聞いてきた。


「キスの話だけど……。

こーゆーんじゃなくて……」



するとまふゆちゃんが雑誌を取り上げてページを変えて渡してきた。



そこには明るい公園で楽しそうにキスする一般人カップルの写真が。



「蘭が言ってんのはこーゆーことでしょ?」



私が頷くと美奈ちゃんがスパゲティーをフォークに巻いた。



「なんだよ!それ、キスじゃないし!」


眞冬ちゃんがコクコク頷く。私の頭は混乱。


「キスとチューって違うの?!」


前に座ってる都ちゃんに聞くと都ちゃんまで気まずそうに頷く。


私は一回、頭を整理する。


「……つーかさぁ。


もしかして蘭、今までディープキスの存在も知らないで生きてきたの?」


美奈ちゃんの口から、また訳の分からない言葉が。


「でぃーぷ、きす……?」


「こーゆーやつ」



眞冬ちゃんが雑誌を持ち上げ暗い写真を指し示す。



「え、ちょっと待って?

セックスは知ってるよね?」



美奈ちゃんの発言に都ちゃんがむせた。



「知ってるよ!保健体育で習ったし!」



眞冬ちゃんが鼻で笑い「まさかの学校ー」と、水を飲んだ。



「じゃあさ……。

そうゆう雰囲気になったことはある?」


都ちゃんが「美奈ちゃん、」と、美奈ちゃんを止めるけど「いや、マジでこの子ヤバい」と、都ちゃんを手で制した。



「例えばさ……。

押し倒されたとか、長くチューされたとか」



何だか真剣な美奈ちゃん。眞冬ちゃんは楽しそうに私を見る。


私は色々考えてみる。



「あるよ」



そう答えると美奈ちゃんより先に都ちゃんが驚いていた。



「なのに福本先輩、それ以上のことしてこないの……?!」



都ちゃんまで、そんな喰い気味で……。



「てゆーか……。

その、でぃーぷきすって皆してるものなの?


テレビの人達がかっこつけてしてるんじゃないの?」


「まじかよ……」


眞冬ちゃんが呆れたようにつぶやく。



「え……?

美奈ちゃんと都ちゃんはしたこと、あるの……?」



二人は静かに食べ進める。



「あるの?!都ちゃん、あるの?!」



私が乗り出して聞くと美奈ちゃんが私の肩を抑えた。



「そーゆーことは聞くものじゃない」



そうなのか……。

みんな、あーゆーことしちゃってるのか……。


テレビの世界かと思っていたけど……。

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