第2話

日曜日。



結奈ちゃんの地元の駅で二人で待ち合わせした。


俺は伊達先輩の言葉を一人、思い出す。




『夕方の日の出公園は夕焼けが綺麗らしいから、そこで良い感じになった時すかさずいけ』



桜先輩もそれに付け加える。


『結奈ちゃんは意外とロマンチストだから。良い雰囲気が大切』



「あ、カク。早かったねぇー」



向こうから結奈ちゃんが笑って手を振りながら俺のところに来る。



「待った?」



俺は結奈ちゃんの鞄を持ち「ぜんぜーん」笑顔で答えた。


結奈ちゃんは俺が鞄を持つといっつも引き止めて「パシッてるみたいじゃん」と、怒る。



今日ももちろん、「変な気、遣わないで!!と、怒っている。



……可愛いよねぇ。素直に持たせれば良いのに。



そんな結奈ちゃんが俺は好きだ。



「良いんだって」



結奈ちゃんは多分、すごく不器用な子。



多分、上手な子だったら笑ったりするんだろうけど、結奈ちゃんはそれができない。



本人はそこが可愛いげないとか気にしてるらしいけど……。


そこもまた可愛い。



……って、俺は一人で何をノロケてるんだ!



俺にブツブツ言う結奈ちゃんに笑いかける。



「ポップコーン食べる?」


「……食べる」



小さく答える。



「では角山良介、結奈ちゃんの食べたい味を当てて差し上げましょう!」


「キャラメルください」



俺を差し置いて一人でさっさと買う。



「結奈ちゃん……早いっすねぇ……」


「あ、ごめん。早く食べたかったから」



俺と結奈ちゃんはいっつもこんな感じ。

良い雰囲気になる、なんてすごーく難しいのだ。



にも関わらず、この間はチャンスを逃した。



……俺、バカだなぁ。



今日は結奈ちゃんと最近流行りの映画を見に行く。



「カク、どんなのか知ってる?」


「いや、知らない。結奈ちゃんは?」


「私も知らない」



そして俺の目を見て笑った。



「つまんなかったらどーしようか」



そんな結奈ちゃんに俺は大袈裟に言う。



「結奈ちゃんと一緒なら、どんな映画も面白い!」



大袈裟に言うけど本当に思っている。



「また、そうやって……。バカじゃないの」



結奈ちゃんはそうやって俺の言葉を流すけど、その顔はいつも少し嬉しそう。



「あ、ここだ。カク、この席だよ」



結奈ちゃんの先導で席に座る。



「良い席だねぇ。S席だよっ!」


「……いや、ここ一番端」



結奈ちゃんとなら、どこでもS席。



「そんなS席で結奈ちゃんに、渡したい物がありますっ!」



俺は鞄から用意しておいたプレゼントを結奈ちゃんに渡す。

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