キスの距離
斗花
第1話
俺の話を聞き終えて伊達先輩が一言。
「それはお前が悪い」
「……ですよねぇ」
隣にいた桜先輩が「偉そうに……」と、伊達先輩を笑う。
その言葉に伊達先輩はお茶を飲む。
「うるせーよ。
悪いけど俺はこいつと違って、やる時はやるからな」
偉そうな伊達先輩を桜先輩はアッサリとかわした。
「でも本当、なんでそのタイミングでいかなかったの?」
桜先輩の言葉に俺は思わず苦笑。
「それは……。
結奈ちゃんが何事もなかったように、スタスタと帰ったんですよ」
伊達先輩がまた静かにお茶を飲んだ。
俺、角山良介は約30分前に伊達先輩達にライブのお礼をすべくこの家に訪れていた。
「……あ、カク」
「こんにちは!
これ、持ってきました!」
部屋に上がるとそこには桜先輩の姿が。
「……お邪魔でしたか?」
「いや、別に。上がれよ」
伊達先輩は俺を快く(??)部屋にあげてくれた。
「結奈ちゃんは?」
笑顔で聞いてくる桜先輩に甘えて、俺は先程、先輩方に結奈ちゃんと俺の話を聞いて頂いたわけだ。
結奈ちゃんってゆうのは俺の彼女の名前。
二月の始めから付き合っている。
「でもまだ四ヶ月くらいでしょ?
そんなに急ぐことないんじゃないの?」
桜先輩の言葉に伊達先輩も大きく頷く。
「キスくらいいつでもできるよ」
俺はその言葉に頭をかいてしまう。
結奈ちゃんと俺は付き合う前から仲良しで、昔からノリで抱き着いたりしてたし、付き合ってからも何の変化もない。
勿論、キスもしてない。
だけど俺も男だし、何だか俺達は仲が良すぎて。
この間、学校ですごい良い感じになったのに、その時も結奈ちゃんに笑ってごまかされた。
それに俺にはどうしても気掛かりなことがある。
「なんか結奈ちゃん、前付き合ってた大学生とそうゆう関係までいったらしいんですね。
それは俺の責任で-」
「確かにあれは角山くんの責任だね」
桜先輩に厳しく言われる。
「だから、その責任取らなきゃいけなくて……」
「でも学校でキスする訳にはいかねーだろ。
野上と横溝じゃあるまいし」
伊達先輩が冷静に言う。
「……そうですか?」
「だって誰に見られるか分かんねーじゃん」
桜先輩がその言葉を聞き「そうだよねぇ」と、面白そうに言った。
「でも、角山くん。
結奈ちゃんと明後日の日曜日デートするんでしょ?」
桜先輩の発言に俺は目を見開く。
そんな俺を見て桜先輩が「え、違うの??」と、不思議がる。
「そのデートでの作戦を考えるべく、わざわざこんな汚い部屋に一人で来たんじゃないの?」
伊達先輩は簡単に納得。
「おかしいと思ったんだよ。
カクが春日さんを連れずに一人でここに来るなんて」
春日さんってのが結奈ちゃんの名字だ。
「俺、聞きました!
伊達先輩と桜先輩はすごい策士だって!」
俺の言葉に伊達先輩はドヤ顔。
「この間の引っ越しも二人が考えたんですよね?!」
「まぁな」
俺は手を合わせて懇願する。
「どうか俺をプロデュースしてください!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます