2-2.5 幕間

車内に掲示された広告に、ハワイ旅行のものがあるのを見て、思い出す。

実家は海の近くにあった。

そのせいで、小学校高学年に上がるときに買ってもらった自転車が一年もたたないうちに錆だらけになったのを覚えている。

それが嫌で、買い替えてほしいと駄々をこねたら母親に叱られた。

「うちはそんなに裕福じゃない」

事あるごとに母親はそう言っていた。

そのせいもあるのだろうか。母親が死んで三年経った今も、気がつけば金のことばかり考えてしまう自分がいる。そしてそんな自分と、自分を取り巻く環境にも嫌になる。

いっそのこと全てを放り出したくなる瞬間がないといえば、嘘になる。

その広告の横にある都市部にしかない進学塾の広告が目に入る。

「未来にススメ!」というありきたりなキャッチコピーと制服を着た高校生のイラストが描かれているのを見て、この進学塾に通っているような高校生たちは、かつての自分がそうであったように風俗業、それもゲイ風俗なんて別世界の代物としか思えないだろう。

風俗店はよく「ディズニーランド」と形容されることがある。

現実なのに、非現実を味わえる夢の国。

最初にこれを言い出した人はきっとそんなことを考えたのだろう。

アルカディア。理想郷という名前のついた風俗店に勤務している自分の存在を思い出し、思わず苦笑してしまう。

そうこうしているうちに、理想郷の最寄り駅へと電車が到着する頃合いだった。


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