1-3
「もうちょっと手加減してくださいよ」
デッキは貸してあげるから、と言われ渋々付き合ったポケモンカードで四戦四敗。コテンパンにされたため、思わず愚痴をこぼすと、ハジメさんはケラケラと笑った。
「ごめんごめん、つい楽しくなっちゃってさ。ルール知ってるほかの子たちともたまにやるけどツバサとやる時が一番楽しいんだよ」
ゲーム強い人とやるとノッちゃうんだよね、と笑う。
「お世辞辞めてくださいよ、それにハジメさんに比べたら全然でしょ」
「まあね、私強いし」
ハジメさんはポケモンカードの公式大会にも出ているかなりの強者だ。対して僕は昔かじってた程度のカジュアルプレイヤーであり、本気を出されて勝てるわけがない。
でも、とハジメさんは付け足す。
「ツバサがゲーム上手いと思ってるのは本当。少しかじってるだけの素人とは思えないよ」
そういわれて思わずはにかんでしまう。
「ツバサはポケカとかしっかりやらないの?」
「やりたいんですけどね。お金がかかるじゃないですか。カード集めるのって」
「それはあるよね~。環境もコロコロ変わるし。私もこれに何万かけたか怖くて数えてないや」
ハジメさんはピカチュウの描かれたプレイマットをトントンしながら言う。
「あ、それよりもうちょっとで時間じゃない?」
ハジメさんにそう言われ、時計を見ると予約の時間十分前になるところだった。
それとほぼ同時に事務所の固定電話が鳴った。
うわさをすれば、とハジメさんが立ち上がり、受話器を取る。
「はい。アルカディア、ハジメが承ります。」
はい、はい、と通話しながらこちらに目くばせしてくる。[準備しときな]。
こういう時は大抵バックプレイの追加だ。
隣の物置きから浣腸剤と私物である洗浄機を持ち出してくる。
部屋に戻ると諸々を手にした僕を見て、ハジメさんが指でOKマークを作る。
「......はい、失礼します」
電話を終え、ハジメさんはソファにかけてあった上着を手に取る。
「私が迎えに行ってくるからお尻洗っときな」
「すみません、ありがとうございます」
「いーえ、オーナーいないし大丈夫よ」
ハジメさんは優しい。
通常、指名が入ると、指名されたボーイ以外のボーイが客を迎えに待ち合わせ場所に向かう。店舗に人が少なければそのボーイ自身が迎えに行くことになっている。今日のようにオーナー不在でその代理たるハジメさんは迎えに行かなくても良いのだが、ハジメさんは僕が急がず準備できるようにしてくれているのだ。
全員が全員ハジメさんのようなボーイではない。オーナーですら機嫌で人をコントロールする節がある。同じような先輩ボーイは多くはないが存在している。そんな中で、ハジメさんのような温厚で話しやすい人は好きだ。
無論、これは恋愛的な意味ではない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます