第88話

「お前が遊んでくれないなら、他の奴と遊んじゃうからな!」



子供じみた発言だって分かってた。でも涼に少しくらい焦って欲しかったんだ。


俺は涼以外の人間が嫌いだから……放置しても涼から離れて行かないだろうと思われているのは癪だった。


俺の腕に巻きついていた女を引き摺って今度こそ涼に背を向ける。別にそれほど期待はしていなかった。少し怒るくらいしてくれたらなって……でも。



「……」


「っ、」



廊下を曲がる直前にチラリと見た涼の顔が、あまりにも悲しそうで……その瞬間、ゾクリと背中に興奮が走った。


涼が、……悲しんでくれた。俺が他の女連れて歩いてるの見て、泣きそうな顔してた。


足元から湧き上がるような高揚感。彼女の悲しみの表情は、自分への愛情に直結しているように感じて、もっともっと見たい衝動に駆られた。



「響くん?ね、本当に今日私と帰ってくれるの?」


「…………あー、帰ってもいいよ」


「嘘、……やったぁぁ!」



なあ、涼。もっと悲しんで?

そうしていつか、……部活なんかより俺が大切だって気づいてよ。



ここから俺の、歪んだ青春時代が始まった。

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