第82話

ふわりと暖かい温もりに包まれて、まるで夢の中にいるのではないかと思ってしまうほど、都合の良い展開。


うそだ、嘘だ……だって。



「……さっき、……私のこと女に見たことないって言ってたじゃん!!!」


「うおっ、」



彼の胸を力一杯突き飛ばし、ムッと顰めっ面で睨む。しかし、何故だか彼は嬉しそうに笑い飛ばして、口を開く。



「ね、もしかしてそれで泣いてた?」


「……」


「ははっ、なにそれ。可愛いな、お前!」


「…………は?」



心臓が潰れそうに辛かった先ほどの私を笑われ、あまりの腹立たしさに途轍もなく低い声が出た。その瞬間、驚いた小動物のようにピクッと肩を上げ、「あ、違う、待って、怒んないで」と機嫌をとりつつ近づいてくる響。



「だって、涼は涼じゃん。俺の中のカテゴライズは、女、男、涼だもん」


「……は?」


「俺はお前だけの気持ちがほしい。……ずっと前から、お前しかいらない」


「……」


「ごめんな、勘違いさせて」



さっき笑ったことに対する懺悔なのか、額に触れる優しいキス。それがトリガーになったように、私の瞳から再びボロボロと涙が溢れ出す。



「……っく、ひ、……本当に、私のこと、好きなの?」


「ん、大好き」


「幼馴染として、とか……親友として、とかじゃなくて?」


「ん、キスしたいし、エッチしたい系の好き!」



ニカっと笑った響を「最低」と睨めば、「涼もさっき触れられたいって言ったじゃん」とキスをされた。



「私、響の……なに?」


「次からは、彼女って言ってい?」



コテンと傾けられた顔が可愛くて、「……許す」と告げつつ響の首に腕を回せば、「ふはっ、やった」と子どものような声をあげながら、私をぐいっと抱え上げた。

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