第80話

「……なんで、泣いてんの」


「泣いてない。離して」


「……やだ。離さない」


「……」



そういう軽率な発言がどれほど私を縛り付けるか分かっていない。縛り付けて、好きを募らせて、どんどん響が求める私から遠ざかる。それがどうにも耐えられないんだ。



「……もう、無理。ごめん響」


「涼、」


「もう戻れないよ。ごめん、ごめんね、響……」


「……」



どんなに絶望したって、近くに響がいるとドキドキしてしまうこの心臓が嫌だ。触れられれば、どうしたって熱くなるこの体も穢らわしい。


こんな私、響の近くにいる資格ない。



彼から離れようと踠けば、強い力で抱きしめられる。彼の香りが近づいて、頭がくらっとして。そのたび嫌な自分を見せつけられるから、本当にもうやめてほしい。



「涼、なんでだよ……、無理とか、言うなよ」


「……」



泣きそうな声出さないで。私がいなくても生きていけるようになって。だって私、もう……——




「好きなの、響が。ずっと」


「……え、」


「もう、隠せないから……、もう一緒にいられない。響見てるだけでドキドキするし、飲み会のあの夜初めてしてから……触ってほしいとか思っちゃうし」


「……」


「こんな幼馴染、気持ち悪いでしょ……?」

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