第75話
「あの、好きでいるだけならいいですか?」
健気に続く彼女の言葉。
気持ちを消したくても消えない。だから、恋人になれなくたってこの気持ちを抱えていたい。その気持ちが痛いほど分かるので、自分の分身を見ているように心が苦しくなる。けれど……
「無理、迷惑。そういうの全部気持ち悪いから」
冷え切った彼の言葉がグサリと胸に突き刺さった。
……あ、そうだよね。そりゃあ、恋愛感情のない相手から一方的に想われているなんて気持ち悪いだけだよね。
ドクドクと心臓が波を打つ。
あーあ、瀬古さんのせいだ。こんなこと分かってたのに、こうやって傷つかないように必死に保険張ってやってきたのに……期待してしまった分だけ、高いところから突き落とされた。
瀬古さんのせいにしないとやってられなかった。今すぐ幽体離脱して直江涼を辞めたくなるほど、自意識過剰な自分が恥ずかしくて、情けなくて、死んでしまいたい。
響は女が嫌いなんだもん。長年一緒にいる私には"触れる"って、ただそれだけ。
たったそれだけで周りより特別だって勘違いして、もしかしたら響も私のこと好きなんじゃって自惚れて……。響が嫌いな、……気持ちの悪い女になってしまった。
「気持ち悪いって……ひどいよ」
「そう言われても無理なもんは無理なんで」
「じゃあ、あの子は?いつも一緒に会社来てる……直江、さん?」
「……涼がなに?」
思わぬところで自分の名前が出て、声が漏れそうになった。
嫌な予感がして、今すぐこの場から逃げてしまいたい。それなのに、さっき幽体離脱したいなんて一瞬でも思ってしまったからだろうか?体がピクリとも動かない。
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