第74話

視線を上げれば、吹き抜けの2階を歩く響がそこにいて、その少し前にはふわふわの巻き髪が可愛らしい女性の姿。



「……」



終業後。人気のない場所に向かう男女。緊張気味に俯く女性の後ろを黙ってついていく響。


いかにも"今から告白します"といった雰囲気だ。



響が彼女の告白にオーケーするとは到底思えないが、問題はそのあと。女性が逆上して暴れたり、若しくは響が激しい拒否反応で暴れたり……。


そういう場面に今まで何度も立ち会ってきた私としては、このまま大人しく彼がこの場所にやってくるのを待つなんて出来ないわけで。






「私、真壁くんのこと好きなの。今、彼女とかいなかったら私と……」


「無理っすね。俺、女無理なんで」


「……っ、」




予想通りズバッと切り捨てる響に私の心臓までグサリと傷つく。もう少しオブラートに返事をしてあげられないものか。


廊下の隅で始まった告白に聞き耳を立てるのは趣味が悪いと思われるかもしれないが、これも彼のナイトとしての役目のひとつ。


女性側がこのまま大人しく身を引いてくれれば私の出る幕などないのだが、これが案外そうはいかない。



パターンは大きく分けて三つ。


ひとつとしては逆上パターン。「どうしたら付き合ってくれるの?!」と襲いかかってくることも珍しくはない。


次に多いのは泣き出すパターン。「ひどい、そんなはっきり言わなくても……」と泣き崩れるが、真壁響はそれに優しく寄り添うような男ではないので、代わりに私が慰めたり……


そして最後は、「身体だけでもいいの」と誘惑してくるパターン。これが一番厄介で、はだけた女性が無理やり響に抱きついた時は一週間ほど蕁麻疹が消えなくて大変だった。


さて、今日はどのパターンで来るか。

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