第71話

「ほんと分かりやすいね、直江さん」


「な、なんのことだか」


「付き合ったの?」


「……そんなんじゃないです」


「へぇ、“付き合ってないけど”進展はあったんだ?」


「……」



見透かすような瞳。優しい人だと思っていたけれど、どうやら相当意地悪な人らしい。


これ以上瀬古さんのおもちゃになるのは癪なので、「……セクハラで訴えますよ」と脅したが、「最強のパワーワード!」と喜ぶからしてやった感がまるでない。



「いいねぇ、幼馴染で、好き同士で。でも本当の気持ち言えなくて……って。青春だなぁ、羨ましい」


「誰の話ですか、それ。全然そんな関係じゃないです。私たちは」


「そういう反応含めて青春だよね」


「……」



勝手に解釈して、勝手に私たちを語る彼が少しだけ腹立たしかった。


“青春”なんて言葉で片付けてほしくない。男女の幼馴染だからって簡単に“恋愛”で結んでほしくない。



「瀬古さんが想像してる好きは恋愛的な意味でしょうけど、響の中にはそういうの一切ないですよ。私のこと女として見てないんで」


「またそんな卑下して……」


「でも、彼にとって私は特別です。世界で唯一信頼できる他人なんです」



はっきりと言うと瀬古さんは目をパチクリさせて、それから「卑下したのかと思ったら、すごい自信だった」とまたおかしそうに笑う。


私は恋愛的な意味で響が好き。それはもう認めざるを得ない事実。


でも、それだけじゃない。例えば母親が自分の命を投げ打ってでも我が子を守るような……そういう類の無償の愛。



自分より何より、大切で守りたい存在なんだ。

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