05.ジェンダーレスな君
第68話
一度きりの思い出のはずだった。
自由な彼の気まぐれ、気の迷い、酒の勢い。
あの夜の出来事は、さまざまな奇跡によってもたらされたものだと……私はその思い出に縋ってこれから長い人生を生きていくのだと。そう思っていたのに、だ。
「……っん、」
「涼、腰下がってる。上げろ」
「もっ、無理……っ」
「ダメ、許さない」
あれから連日繰り返される淫らな行為は、回数的にそろそろ奇跡で片付けるには無理があるころだ。
「…………絶倫」
「ん、なんか言ったか」
ようやく行為が終結した深夜1時ごろ、響が飲み物を取りに行っている隙にネットで調べたのは、そんな言葉。
一般的に認識されているのは精力絶倫のことだが、本来は飛び抜けてすぐれていることを言うらしい。ほーなるほど。勉強になった。
「涼、シャワー浴びないの?」
「誰かさんのせいで動けないの」
顔だけを向けてジトリと睨むが、むしろ機嫌よく「へぇ?」と笑い、「じゃ、俺が水飲ませてやるよ」と口移しで水分を与えられる。
「っ、ちょ……!」
「ペットボトル持てない涼ちゃんのために、優しすぎる俺。褒めてくれていいよ?」
「馬鹿!もー、しっかり溢れたじゃん」
唇の端からダバダバと溢れた水がシーツと私の胸元を濡らす。体を拭くために仕方なく起きあがろうとすれば、やっぱり楽しそうな響に上から肩を押さえつけられた。
「……何」
「俺が拭いたげる」
「……っ!い、いらない!」
「遠慮すんなって」
少し前まで散々舐られた身体。今私を鑑識に出せば、身体中から響の唾液が検出されるだろう。
再びぺろりと舐められて、思わず「んっ」と漏れ出る声が憎い。
「涼のその声、お気に入り」
「な、……んだ、それ」
トロッと蕩けるこの瞳はスタートの合図だと、度重なる奇跡によって学習した。
「せ、性欲おばけ!!」
「なんとでも言って」
繰り出した渾身のパンチを簡単に受け止めた彼に噛まれたその手には、うっすら歯型が残った。
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