第56話
そのまま去っていった響に「ねぇ!本当にかっこよかった!」「見惚れすぎて何も喋れなかったんだけど?!」と加藤さんと田中さんが興奮する
「ね、本当に二人は幼馴染ってだけ?」
「え……?」
微笑を携えて聞いてきた瀬古さんに胸が波打つ。
本人は愚か、周りの人にだって一度もバレたことのないこの気持ちを悟られたのかと不安になりつつ、「はい、それだけです」と小声で返す。
「へぇ、いいなぁ。青春だね」
「はい?」
「ふふ、ごめんね。独り言。おじさんの道楽って感じかな」
「……はぁ、」
楽しそうにクスクス笑う瀬古さんに素直に怪訝な顔をすると、今度は悪戯な笑みと共に見つめられた。
「ね、彼に伝えておいてよ」
「え?」
「あんな幼稚な牽制してるようじゃ……すぐに掻っ攫われちゃうよって」
「……?」
どう言う意味か分からず、もう一度聞き直そうとしたけれど、「飲み会楽しみだね」の一言で遮られた。
言葉のとおり楽しそうに垂れ目が細められるが……何故だか私は、少しだけ飲み会が憂鬱になった。
*
「響くん、これ食べる?」
「お酒、次何飲む?」
「トイレの場所分かる?一緒に行こうか?」
「……飯も酒も自分で頼むし、トイレの場所は店員に聞くんで大丈夫っす」
相変わらず“惹き寄せてる”響。固定の席で仏頂面を貫く姿は失礼極まりないが、これでも普段の数百倍はお利口さんだ。
普段、飲み会の類には一切参加しない人が……どういうつもりか。
響なりに周りに溶け込もうと努力しているのだから誉めるべきことなのに、なんだか面白くない気持ちになってしまうのは、ナイトの役割の裏に孕む乙女心のせい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます