第55話
「うす……」
「うわー、本当綺麗な顔してるね。あ、そうだ今度の飲み会の話聞いた?」
「はい、聞きました」
「参加できそうかな?」
「はい、よろしくお願いします」
人当たりの良い笑顔で話しかける瀬古さんは相変わらずとして。ちゃんと敬語で返す響はかなりレアで、密かに感動。
響もこうやって大人になっていくのか……と、謎の親目線で二人の会話を聞いていれば、くるっとこちらを向いた瀬古さんの顔。
「二人とも参加できそうで嬉しいな。仕事中じゃ、あまり沢山話せないからね」
「あ、……そうですね」
「二人とも」と言ったので、私と響、二人に対する言葉のはずなのにその瞳には私一人を映す。
同じ部署で働いているのは私だし、別に変ではないのかもしれないが……まだ心の中に自意識過剰を飼ってる私はやっぱりソワソワ顔を赤らめてしまう。
真っ直ぐ瀬古さんを見ることができず、ゆらゆらと視線を落としたタイミング、先輩たちに見えない角度でトップスを後ろに引かれた。
「……、涼」
「何?」
心なしか弱々しく聞こえた声に首を傾げると、今度はいつも通りの少しだけ高圧的な声で「今日、帰り一緒帰ろう」と一言。
そんなのいつものことなのに、何故わざわざ聞くのだろうと思ったが、取り敢えず頷く。
そうすれば、私の答えに満足そうにクッと上がる口角。やや意地悪そうなその表情にドクンと一人だけ大地震に見舞われた。
見慣れていてもいつもときめいてしまうその顔も、自由で自信家なその性格も……全てが私の心を捕らえて、縛って、離さない。
(ああ、好きだ……)
顔を見るたび、言葉を交わすたび。毎秒君に恋をする。好きが増えても辛いだけ、分かっているのに馬鹿でしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます