第52話
素直に言うべきか迷っていれば、聡い加藤さんが私より先に「イケメン幼馴染、魚食べれないのか」と口に出す。
「ん?イケメン幼馴染って?」
「瀬古さん知りません?ITのやたら綺麗なインターン生」
「綺麗な……あーもしかして、身長高くて色白の子?昨日エレベーターで鉢合わせたかも」
「多分それ。なんか、オーラすごい子です。直江さんの幼馴染らしいですよ」
「へぇー、そうなんだ」
IT管理課のインターン生としては把握していなくても“綺麗な”で誰か伝わるなんて、改めて響の凄さを思い知る。
「生魚苦手ならお肉美味しいところがいいよね」とスマホでお店を探し始める瀬古さんはどうやら今回の幹事らしい。
「瀬古さんがね〜直江さんと飲みたかったんだって」
「ちょ……っ、田中さん!」
「やらしい〜、若い子と飲めて嬉しいんだ〜」
「加藤さんも悪ノリやめてよ。セクハラで訴えられたらどうするの?」
田中さんと加藤さんにいじられてタジタジの瀬古さんは普段のキリッとした仕事姿とギャップがあって面白い。
クスリと笑えば、「純粋に飲みたかっただけで、変な意味ないからね!」と必死に弁解してくるのでさらに笑いが込み上げる。
「ふふ、大丈夫です。セクハラとか思わないです。いつも良くしていただいてますし、感謝しかないですよ?」
ニコッと笑って見上げれば、視線の先の瞳が僅かに開かれる。
「……、そっか。よかった」
小さく返して目を逸らす瀬古さん。
言葉を発するまでに変な間があった気がして、何か変なことを言っただろうかと少しだけ心配になった。
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