第50話

何が起こったか一瞬分からず、「え?……へ?」と戸惑いながら耳に触れると、確かに存在する金属。



「イヤリング?」


「ん。それもやる」



悪戯が成功した子どものような顔で無邪気に笑う響にキュッと心臓が疼く。



「しばらく付けられないピアスじゃ意味ねぇから」


「……意味?」


「涼は分かんなくていい。でも職場でも付けろよ?そのスカートおじさんにも見せつけろ」



イヤリングのついた耳たぶを指先で揺らされる。思わぬプレゼントは嬉しいが、その意図はやっぱりよく分からなくて……



「あの……瀬古さんはおじさんじゃないよ?」


「……それなら尚更見せつけて?」


「……」



今度はぎゅっと耳たぶを摘まれて、思わず固まった。



「俺があげたんだからもちろん付けるよな?」


「わ、分かったつける」


「よし」



くしゃりと頭を撫でた彼は満足げに笑った。その耳にはシルバーのピアス。今日買ったお揃いのものとは別のやつ。



「響も……今日買ったピアスつける?」


「ん?ああ、付けていこうかな。インターン先そこまで服装に厳しくないし」


「……」



微々たる効力かもしれないけれど、このペアのピアスが少しでも女除けになれば……なんて。


そんな姑息な考えは、響には絶対に内緒だ。





03.揃いのピアス

—end—

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