第49話

「似たデザインのイヤリングならこっちにあったけど?」



不思議そうに首を傾げる響に顔を横に振る。



「響がピアスなら、私もピアスじゃなきゃお揃いにならないじゃん」


「……、」



体に穴を開けるなんて……とか、穴開けるとき痛そう……とか。色々と尻込みしていたピアスだけど、響と揃いのピアスをつけるためならどんなことでも頑張れる。



「……お前、そういうこと天然で言うからこわいよな」


「え、なにが?」


「いや、こっちの話」



「じゃあ、買ってくるわ」と私の手からピアスを拾い上げた響はこちらに背を向ける。



「……本当、怖いわ。頼むから俺だけにして」



遠ざかっていく彼の背中から聞こえた声は……私の空耳?



それからしばらく店内を見回していると会計を終えた響が戻ってきた。


「ほら」と渡されたショップの紙袋。「ありがとう」と伝える口元がだらしなく緩みそうで紙袋の方だけを見つめた。


中を覗けば、綺麗に包装されたピアス。それと一緒にピアッサーも入っていた。



「俺が開けたげる」


「え?」


「上手だから安心しろよ。初めての涼ちゃんでも痛くないようにしてあげる」


「……」



ニマッと怪しく笑う響に「なんか言い方やだ」と怪訝な顔をして。でもやっぱり嬉しいので満面の笑みで「ありがとう」を渡した。



「こんな安物でそこまで喜ばれてもなぁ……」


「いや、十分高いよ!私アクセサリーにこの値段出したことないもん」


「ふーん?」


「ピアス開けたらどのくらいで付けられるようになるのかな?」


「ファーストピアスが1ヶ月くらいじゃね?」


「(1ヶ月。結構かかるんだなぁ)」



せっかく貰ってすぐにでもつけたいのに。つけるまでにそんなにかかるのは結構ショックな情報だった。


思わずシュンと視線を下げると、「分かりやす」っとくすくす笑われて。



「はい、これつけとけよ」


「……え?」



肩を掴んで動きを止められたあと、耳たぶに触れられる。彼の指が離れた後、ほんの少し残る耳の違和感。

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