第46話



飲み物を飲み終わって甘味処を出ると、駅ビル内に併設されたデパートをぶらぶらすることにした。



「ねぇ……あの人たち、」


「……何、撮影?」


「モデルさんかな?」



「……」



こういう人の多いところにいると決まって注目を集める響。そりゃあ視界の隅に映った瞬間ハッとしてしまうような美人だ、致し方ない。


ヒソヒソと遠目で噂話をする程度の人たちなら何も問題ないが、ここからストーカーに発展する人もいるから厄介なんだ。



「響、せめて帽子とか被ったら?ずっと人の目集まるの、疲れるでしょ?」


「……。疲れるよ。俺もお前みたいに人の視線に疎い人間だったら良かったのにな」


「え?」


「あーあ、せっかく大学は回避したのにな」


「……っ」



繋いでいた手を離して私の腰に手を回す響。驚いて見上げれば、「俺のってアピール」と無邪気に笑うから……そろそろ振り回すのもいい加減にしてくれと怒りそうになった。



「あ、涼。ここ入ろう」


「ん、いいよ」



響が入ったのはアクセサリーショップ。ピアスが好きな彼のプレゼントを購入するために私も一度だけ入ったことがある場所だった。


新しいアクセサリーでも欲しいのだろうか。2ヶ月後には響の誕生日だし、プレゼントのリサーチをするのにちょうどいいかもしれない。


背を丸めてアクセサリーを眺める響の後を追いながら、私もなんとなく彼の好みそうなものを物色していると……



「っ、」


「あ、動くなって」



不意に、私の髪を耳にかける冷たい指先。驚いて体を揺らせば怒られた。

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