第30話
……ドカッ
「……っう、」
「調子乗んな、響!」
掴まれていない左足を思い切り蹴り上げて響の肩口に蹴りを入れた。
驚いてこちらを見上げる響を睨みながら、スカートの裾を下ろして立ち上がる。
「私が着る服は私が決める!」
「……」
「いくら響でも、次同じことしたら許さないから!」
珍しく語気を荒げる私にポカンと固まる響。ムカムカと胃の不快さを携えたまま、彼の横を通り抜けて外に向かった。
「はっ……?!涼、そのまま行くの?」
「……悪い?言ったでしょ、私が決めるって。似合ってなくても今日は絶対これで行く」
我ながら頑固だなと思う。否定されれば否定されるほど、むかついて意見を通したくなるのだ。
出来ることなら響と関係性を変えたい。女の子として見てほしい。好きになってほしい。一緒に人生を歩いていきたい。
本当の私は欲まみれ。叶いもしない幻想、期待が恥ずかしそうに心の奥に潜んでいる。
でも、残念ながら私は欲のままに生きられる人間じゃないから……いつだって響と気まずくならない方を選択してしまう。
……長く、一緒にいたいんだ。たとえ響に愛する女性ができたとしても、不変の友人としてそばに居続けたいんだ。
「……鍵、閉めるよ?急げば電車間に合うかも」
「……」
「響が行かないなら私は先に行く」
私の頭の先から足先までを瞳で追った響は、不貞腐れた顔のまま諦めたように「……行く」と呟いた。
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